
2025年5月30日に改正保険業法が成立し、6月6日に公布されました。施行は「公布から1年以内の政令で定める日」とされており、2026年4月〜6月頃が見込まれています。
今回の改正は、保険募集の現場にとって大きな転換点です。単なる法令変更ではなく、「提案品質そのものの見直し」が求められる時代が始まります。
では、2026年を迎えるにあたり、募集人は何を意識し、どのように進化していけばよいのでしょうか。このレポートでは、そのための3つの視点 に整理してお伝えします。
視点1|“お客さま本位”を具体的な行動に落とし込む
今回の改正で最も強調されるのが、お客さま本位の業務運営(FD:フィデューシャリー・デューティ)を行動レベルで徹底することです。
これまでも理念として掲げられていましたが、2026年以降はより明確な実務として求められます。
◆ 具体的に求められるポイント
- お客さまの属性・家族構成・将来設計まで踏まえた丁寧なヒアリング
- 商品選択の理由を、根拠を示して説明する姿勢
- ノルマや社内方針ではなく、お客さまの利益を中心に提案すること
- 比較推奨販売では、選定理由の書面化・記録の保存が必須に近づく
“お客さま本位”は抽象的なスローガンではなく、提案プロセスの透明性・合理性を見える化することが鍵になります。
今後は「説明したつもり」は通用せず、説明した証跡を残す文化がより一層求められます。
視点2|乗換提案の“質”を変える — メリットとリスクの両輪説明へ

今回の法改正の背景には、貯蓄性保険の乗換提案に関するトラブル増加があります。そのため、2026年以降は乗換提案(切替提案)の透明性と説明責任が大幅に強化されます。
◆ 説明が義務化・強化される内容例
- 解約に伴う返戻金の減少、解約控除の発生
- 新契約で発生する健康告知や保障の空白期間
- 保険料総額の増加可能性
- 老後の資産形成に与える影響
- 新旧商品を比較した際の数値的な根拠
今後は、「メリットだけを説明する乗換」は明確に不適切と判断される時代になります。募集人に求められるのは、単なる商品の置き換えではなく、
ポイント
✔ お客さまの人生全体にとって
✔ 本当にプラスとなる提案であるか
✔ 適切な根拠が示されているか
この3点を確実に伝えることです。特に記録の保存や比較資料の提示など、提案プロセスの可視化が必須のスキルになります。
視点3|募集プロセスの“質の管理”が新スタンダードになる
2026年以降、金融庁は保険代理店や保険会社の管理・監督を強化していきます。募集の現場はより“データで評価される時代”へ変わります。
◆ 代理店・会社に求められること
- 募集人教育の定期実施(商品知識・法令・比較説明など)
- 苦情・事故・解約率などの募集品質データの報告
- 説明内容の記録(書面・録音・録画など)の整備
- “お客さまに不利益を与える募集”への厳しい是正指導
これはつまり、募集人一人ひとりの説明品質が、これまで以上に「数値」として評価されるということです。今後は、
- ヒアリングの深さ
- 比較資料の正確性
- 記録の整備
- 苦情ゼロの実績
といった要素が、募集人の“信用力”に直結していきます。募集を「売る仕事」から、「価値を説明し、納得いただく仕事」へと進化させることが求められています。
まとめ|保険業法改正3つの要点

2026年の法改正は、募集人にとって大きな負担に見えるかもしれません。しかし本質は、「正しく提案する人が評価される時代が来る」という、極めて前向きな変化です。
今回お伝えした3つの視点を意識することで――
- お客さま本位の具体化
- 乗換提案の透明性向上
- 募集プロセス品質の強化
募集人としての価値は確実に高まります。そしてこれは、信頼される募集人ほど、選ばれ続ける時代になることを意味します。
2026年は、保険募集の世界が「質の時代」へ本格的にシフトする節目。ぜひこの変化をチャンスと捉え、一歩先を行く募集人へと進化していきましょう。


